美人で、儚くて激しくて、まるで月のような人だった。
月だって太陽だって、そりゃ曇っていなけりゃ同じように明日でてくるのだけれど、月は違うんだ。
大気の具合で見え方がとかそういう話でなくて、具体的に昨日とは違ってる。
欠けているんだ。厳かに大胆に。
満ち欠けの話でなくて、欠けている。昨日より。
また巡るそれとはやっぱり違っていて、もう二度と、戻ってはこないんだ。その月は。―
「なんだいそれは。」
「いや、俺はわかるぞ。」
皆既月食の夜、家へ帰るなり少年はそんなことを言うともなしに言っていた。
何故だかは分からない。
それすら月の魔性だとでもいうように。
少し大人びたようなその言い回しに違和感を覚えながらも、どうせ教科書で読んだなにかの一節だろうと思い込み父母は思い思いにそれに応えただけなのだ。
無論、その答えとて今日はとくべつ宇宙へ繋がるような虚空へと、そのままゆっくりと霧散した。
そして少年の詞は方舟に。
想いは遥か流星の背に乗せられた。
0 件のコメント:
コメントを投稿